お知らせ

2018 / 10 / 23  20:12

相続法改正について

弁護士・弁理士の佐藤孝丞です。

平成30年7月6日に参議院本会議において可決・成立した法案(同月13日に公布)、すなわち相続法の改正の内容を紹介いたします。
 
昭和55年以来約40年ぶりの大幅見直しとして、我々法律家にとどまらず大きな注目を浴びているものです。

 

1 配偶者の居住権の保護するための方策

⑴ 配偶者短期居住権の新設(新民法1037条~1041条関連)

配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できます。

⑵ 配偶者居住権の新設(新民法1028条~1036条関連)

配偶者の居住建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を認める法定の権利を創設します。

⇒遺産分割等における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。

 

2 遺産分割等に関する見直し

⑴ 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定。新民法903条4号関連)

⑵ 仮払い制度等の創設・要件明確化(新民法909条の2関連)

相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などに資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度を創設します。

⑶ 遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲を計算上公平に是正(新民法906条の2関連)

 

3 遺言制度に関する見直し

⑴ 自筆証書遺言の方式緩和(新民法968条関連)

自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できます。

⑵ 遺言執行者の権限の明確化(新民法1007条、1012条~1016条関連)

⑶ 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言保管法関連)

 

4 遺留分制度に関する見直し(新民法1042条~1049条関連)

 

5 相続の効力等に関する見直し(新民法899条の2関連)

相続させる旨の遺言等により承継された財産において、法定相続分を超える権利の承継については、対抗要件(登記等)を備えなければ第三者に対抗できなくなります。

 

6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(新民法1050条、新家事事件手続法216条の2~216条の5関連)

相続人以外の被相続人の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)を創設します。

⇒これに伴い、家庭裁判所における手続規定(管轄等)を設けます。

 

7 施行期日

改正相続法は、原則として、平成31年7月13日までに施行されます。過日話題になった債権法改正の施行日(原則)が平成32年4月1日ですから、施行については債権法改正を追い抜いた形になります。

もっとも、①自筆証書遺言の方式緩和については、平成31年1月13日に施行され、②配偶者の居住権を保護する方策及び法務局における自筆証書遺言の保管制度については、平成32年7月13日までに施行されます。